特集
千年以上の歴史をもつ先人の知恵
旨みと風味が濃厚な、乾物の王様
「オーサワの九州産乾しいたけ」
日本人が千年以上前から親しんできた乾椎茸は、乾物文化を代表するひと品です。料理の土台をつくるだしとして、具材として、また主菜としても、和食の味わいには不可欠。椎茸は干してこそ、特有な旨みも栄養素も引き出され、豊かな風味が生まれるのです。
今回は、鹿児島の椎茸農家・中川さん親子を訪ねて原木栽培の様子を、その中川さんの乾椎茸を扱う同じく鹿児島の株式会社かしいには、工場での厳格な選別等を経て商品になるまでを見せていただきました。
日本の椎茸は世界的共通語

きのこは、世界で7万種以上、国内だけでも5千種は下らないといわれているほど多種にわたっています。
とりわけ日本の食卓でおなじみの椎茸は、日本や中国、アジアの熱帯地域が原産。いまでは世界中で栽培されていますが、英語をはじめヨーロッパ各国の言語でも呼び名はそのまま「shiitake」。椎茸は世界に誇る、日本を代表するきのこといえるでしょう。
旨みが凝縮し、栄養価が高くなり、長期保存が可能なのは乾物に共通の特徴ですが、乾椎茸の特に優れている点は、三大旨み成分のひとつであるグアニル酸、生椎茸の3倍ものビタミンD、そして生椎茸に比べて8.5倍もの食物繊維が含まれていること。歯応えがよく風味豊かな乾椎茸は、主菜にも、副菜にも、だしやかくし味にもなる極めて有能な食品なのです。
かつては自然発生するのを採取していただけでしたが、江戸時代から栽培が始まり、現在では原木栽培と菌床栽培があります。原木栽培は、森のなかの“ほだ場”で、クヌギなどの原木に椎茸の種菌(菌駒)を打ち込み、椎茸が出てくるのを待つ自然栽培。
原木栽培は収穫までに約2年かかります。原木を育てるところから換算するなら、消費者の食卓に届くまでおよそ20年がかり。効率やスピードが優先されがちな現代においては、時代の逆を行く食品であるともいえるでしょう。
大変な力仕事と繊細な心配りの両立

国内の乾椎茸のじつに8割が九州で生産されています。鹿児島県志布志市の中川式司郎さん、憲司郎さん親子は3代続く椎茸農家です。栽培場所は、木漏れ日がやさしく風がさわやかに抜ける山のなかの杉林。人間にとっても居心地いい環境が、椎茸の生育にも適しています。
栽培は、原木となるクヌギを切り倒すことからスタート。伐採後、水分を抜いてから“玉切り”をします。玉切りとは、原木を扱いやすくするために1本の原木を約1メートル間隔で切り分けた“ほだ木”にすること。ほだ木のぐるりにドリルで等間隔に穴をあけ、種駒をハンマーで打ち込んでいきます。
「ほだ木をひと月半くらい“仮伏せ”して、菌が活着するのを待ちます。そのあと、梅雨前ごろに“本伏せ”をします。菌がほだ木全体に蔓延して椎茸が出てくるまでは、1年半~2年くらいかな」

菌糸の成長を促すために通気性を考えてほだ木を組む“本伏せ”は、土地の条件によりさまざまな組み方がありますが、中川さんがメインでやっているのは合掌伏せ。
秋になるとほだ木の上下・表裏を組み替え、より湿気のある場所に移動させ、菌が均一にまわるように“天地返し”を行います。
「一本のほだ木の一生のうちに、何度触れてやるか。天地返しをする必要はないという人もいますが、いい椎茸にするには、やっぱり手間をかけないと」と中川さん。
椎茸の自然栽培は子育てに似ている
収穫のハイシーズンは春と秋。傘が開き、薄葉だが水戻し時間が早い“香信(こうしん)”、肉厚で歯応えがよい“冬菇(どんこ)”と、気象条件や収穫するタイミングによって、状態の異なる椎茸の呼び名が変わります。ほかに贈答品に適した大型の“香菇(こうこ)”、傘の表面のひび割れがまるで花が咲いたように見える希少な“天白(てんぱく)”などの区別があります。

「ちょっとした温度の違い、陽や雨の当たり方で出来が変わってきます。路地の左側と右側でまったく違うということもよくあるんですよ」
天候などによって必ずしも狙いどおりにはいかないけれど、基本的には「いいほだ場をつくってあげればいい椎茸ができる」と中川さん。環境を整えて、あとは見守る。余計な手出しはしすぎない、適度な刺激が強く豊かな成長のための促進になる。まるで、人間の子育てや人格形成の話をしているようです。

乾椎茸が良質な理由
中川さんの“乾燥”のこだわり

収穫してから乾燥を開始するまでの時間が短ければ短いほど乾椎茸は風味豊かになる。よい乾椎茸の見分け方は、形や大きさよりも、“おさ(傘の裏のひだ)”が、生のときのように立っていて、乳白~黄みがかったきれいな色かどうか。中川さんのところでは収穫後すぐに乾燥機に入れ、徐々に温度を上げていきながら、椎茸の状態を見極め、1日がかりでじっくりと乾燥させて、香りと旨みを引き出しいく。
かしいの“選別”と“加工”のこだわり

収穫した生の椎茸をスライスしてから乾燥するのが一般的だが、「オーサワの九州産乾しいたけ(スライス)」は、乾椎茸を一度高圧で蒸し、やわらかい状態に戻してからスライスする。水分ではなく蒸気を使うのは、旨みが抜けないようにするため。スライス後、遠赤外線で高温乾燥。高温乾燥により旨み成分のグアニル酸が増加するといわれており、より風味豊かな仕上がりに。
原木栽培が森の環境を守る
「原木栽培の椎茸は、森のなかで、木の養分のみで育ちます。椎茸菌が死んでしまうから、もちろん農薬も使わない。椎茸は安心・安全を絵に描いたような農産物なんですよ」
椎茸に栄養分を供給し尽くしたほだ木は、3~5年で役目を終えます。もはややすやすと持ち上げられるほど軽くなったほだ木は、森に返します。木はやがて土に還り、その土が再び木を育て、森の環境をつくります。原木栽培は、サステナブルに森林を保つ環境保護にもなるのです。

さらには原木栽培で適度に人の手が入ることが山や森の維持にもつながることを考えると、中川さんのような生産者の仕事が後世に引き継がれていくことは、私たち、ひいては地球にとっても重要です。
人は良質な食材を享受でき、森と山は環境が維持される。原木栽培は、人と森と山が共生していける幸福な手段でもあります。私たちは原木栽培の椎茸をおいしくいただくことで、それら価値あるものを残していくサポートができるのです。
「オーサワの九州産乾しいたけ」を楽しむレシピ
だしがら昆布と椎茸の佃煮

乾しいたけの含め煮

昆布と椎茸のあわせだし

八宝菜

椎茸と春雨のスープ

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▶記事全文は、WEBマガジン&フリーマガジンLM vol.12「乾椎茸」でご覧いただけます。
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