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伊豆大島の黒潮100%でつくる伝統海塩
潮と風と太陽がもたらす、命のふるさとの味
「塩」

塩は私たちが暮らし、生きるのに欠かせない大切なものです。その塩はかつて、自由に製造や販売ができない時代がありました。そんななか、伝統的で自然な製法でつくられた、ミネラルを含んだおいしい“本来の塩”の必要性を世に訴え、闘った人たちがいます。

今回は、伊豆諸島最大の島・伊豆大島の海の精株式会社に、唯一無二の塩づくりの現場を訪ねました。

 

 

塩は、私たちの命の源


 


この世界に塩を必要としない人はひとりもいません。それは人の体液が塩分を含んでいるからです。はるかな昔に私たちの祖先は海で生まれ、陸に上がってきました。海水と血液のミネラル組成が近似しているのは、その証だとされています。人だけではなく地球に生きている、すべての生命の原点は海にあります。

マクロビオティックにおいても塩は重要な基本調味料。素材の水分を抜き、旨みや甘みを引き立たせます。また発酵食品は塩がなければできません。そして何よりも塩は、私たちの体を引き締め、元気に活動できる力を与えてくれます。

世界的には岩塩や天日塩が主流ですが、日本には岩塩層が存在せず、岩塩を採取することはできません。また周期的に乾季が訪れる地域ではないため、天日塩を採取することもできません。そのため日本では古代から海水を炊いて塩をつくってきました。

日本列島は海に囲まれていて塩づくりに適していると思われるかもしれませんが、国土は南北に延び、山地が多く平地が狭いうえに多雨多湿の気候のため、塩づくりは困難を極めました。日本の塩づくりは、限られた森林資源を唯一の燃料として、多大な人的労力を必要とする過酷な時代が長く続いたのです。

 

 

日本の塩づくりの歴史と特異な塩事情


 


明治維新を経て1905年に塩専売制度が導入されると、塩の製造と販売は国の管理下に置かれます。塩専売法は、大正期には収益が得られなくなったことから、収益専売から国が援助する公益専売に変わり、製塩事業に対して合理化が図られていきます。そして1972年には法律によって、国内の塩づくりはすべてイオン交換膜式・真空蒸発缶による製法に変わり、従来の伝統的な塩田は全廃されました。

天候とは関係なく室内の設備で安定的に濃縮海水を製造できるようになり、人々を過酷な労働から解放した製塩法でしたが、この方法でつくられる塩は塩化ナトリウム純度99%以上で、工業用には向いても食用には不向きでした。「自然塩復活運動」は、この出来事をきっかけに始まりました。

 


1997年に90年以上続いた塩専売制度が廃止され、申請するだけで塩づくりができるようになった現在でも、イオン交換膜法と真空蒸発缶によってつくられる塩は生産量全体の9割以上を占めています。そうした社会の流れのなかで、海の精株式会社は半世紀以上、伝統的な塩づくりとその普及にひたむきに尽力しています。

 

 

天日濃縮と釜炊きによる日本の伝統海塩



東京から南へ海路、約120㎞。太平洋に浮かぶ火山島、伊豆大島。海の精の製塩場は島内の西部・元町地区、南部・千波地区、間伏地区の3か所にあります。海の精の製塩場でつくられる塩の原料は、目の前に広がる太平洋の海水のみ。

「足しも引きもしません。全工程で丁寧な作業を積み重ねる塩づくりを心がけています」海の精の代表取締役社長・寺田牧人さんは言います。

 

 

溶岩の岩場が広がる千波の波打ち際。海の精の塩づくりは、ここで海水を汲み上げるところから始まります。すぐ近くには、ネット架流下式塩田が建っています。汲み上げられた海水はここで上から流したり噴霧したりを繰り返し、太陽の光と風の力を利用して濃縮します。

天気次第ですが長い場合では2週間ほどかけて海水を約3~4倍に濃縮します。塩田でできた鹹水(濃縮された海水)は、「あらしお」をつくる元町工場と「ほししお」をつくる千波工場の天日温室へ運ばれます。

 

 

あらしお

元町工場に運ばれた鹹水は、「あらしお」をつくる煎熬(せんごう)・採塩(さいえん)工程へ移されます。鹹水を大きな平釜で炊く煎熬は、日本伝統の製塩法。このとき大切なのは、加熱に伴い濃縮が進むことで順々に析出してくるカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウムなどを安定的に結晶させることです。

 

平釜で一昼夜かけて炊かれた鹹水は、塩と苦汁(にがり)の混ざり合った熱々のおかゆ状になります。それを専用のタンクに移し、脱汁機(遠心分離機)に投入して、にがりを適度に含んだ塩と液体のにがりに分けます。脱汁機から出てきた塩が「あらしお」。これを炒って水分を飛ばしたものが「あらしおドライ」です。

 

 

やきしお

「やきしお」は「あらしお」を高温焼成することで生まれます。現在の製法を確立させるまでに約2年かけて文献を当たり、伊勢神宮・御塩殿神社に伝わる古式壺焼製法も参考にして試行錯誤を重ねました。専用の容器に「あらしお」を入れ、焼成窯で一昼夜かけて600℃以上の高温で焼き固め、ほぐすと、さらさらに。マイルドな味わいで後から塩味を足す、食卓塩などに向いています。

 

 

ほししお

「ほししお」は、太陽の力のみで結晶させる希少な天日海塩。専売法の下で特別に認められて生まれたものです。日差しの強い夏場に、チタン製のトレーに鹹水を薄く張り、約1週間かけて濃縮し、苦汁を適度に脱汁したら、しっかり保管。やがて冬になったら、再びトレーに広げ、柔らかい日差しを利用してじっくりと乾燥させます。

真夏の暑い時期には担当者が日に何度も塩の状態を観察し計測を行い、結晶の偏りを防ぐべくトレーのなかを全体的に混ぜ合わせる手作業を繰り返し行います。でき上がった「ほししお」は、しっとりざらめ状で、その味わいはおいしい海そのものとでもいえそうです。

 

 

本当に必要なものを残し、つないでいく


 

 

伊豆大島で生まれ育った3代目社長の寺田さんは塩づくりに関わって40年以上。当初はボランティアで手伝っていたそうです。
「自然塩復活運動に出会ったのは20代の頃。ものづくりにはもともと興味がありましたが、塩づくりと活動に魅了され、後世に伝えていくべきだと思うようになりました」

新しい製法の塩も、昔からの製法の塩もあっていい。いろいろな塩があるなかで、伝統的な製法でつくる塩も残していくことは、先人が育んできた食文化の面からも大きな意味があるはずです。

そのおいしさは、ナトリウムの塩辛さ、カルシウムの甘さ、マグネシウムの苦味とコク、カリウムの酸味といった海のミネラルバランスが整うことで生まれます。海の精の塩をゆっくり舐めてみると、これらの複雑な味が感じられることでしょう。それは伊豆大島の潮と風と太陽がつくる、私たちのふるさとの味です。

 

 

「海の精の塩」を楽しむレシピ


 

旬野菜の浅漬け

 

さっぱり塩和え

 

すまし汁

 

りんごの葛煮

 

 

▶海の精株式会社の最新情報はホームぺージでご覧いただけます。

 

 

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